第3回 一期一会
中学生の時、「一期一会」という言葉に出会って以来、好きな言葉の一つです。26歳で週に1度、キャスター仲間の友人と茶道を始めてからは一層その言葉の重みが身近なものになりました。一期一会とは一生に1度だけ出会うこと。2度と訪れない「今」を愛おしみ、一瞬の出会いを大切にという、茶の湯から生まれたものです。たった一度きり、これっきり、そう思ってもてなす心が大切だと茶の湯では説いています。
人生においても、人との出会い、出来事や物と出会いは果てしなく続きます。一度きりの「今、この時」を大切にすることで、悔いの少ない、明日や将来につながっていくのではないでしょうか。日々は一期一会の連続ですが、忘れられない瞬間はふと訪れます。
特に、かけがえのない出会いは3年前、仕事復帰する際のこと。働く決心は揺るぎないものでしたが、所属事務所がなくては仕事が限られます。まずは事務所探し。NHKの同僚だった友人の紹介で訪れたのが今の事務所です。前途不安な気持ちを抱えていた私に、初対面の社長は笑いかけ、温かい言葉で歓迎してくれたのが今も忘れられません。決して枯れない花束のように、その花は心の中できれいに咲き続けています。
多忙な社長ですが、この業界に再び導いてくれる力強さと安心感、そして「一生、ついていこう」と思わせる影響力に満ちていました。詳細は省きますが、「復帰は今からでも大丈夫!同じ働くママとして一緒に頑張りましょう」と背中を押され、スタートすることができました。志望者の一人に過ぎなかったはずの私に情熱的で寛容な応対。その時のことを思い出すと、「一期一会」という言葉に辿り着きます。
そんな経緯で、フリーアナウンサーに復帰した現在の私にとって、新規の仕事に出会う扉を開くのは書類審査後のオーディションです。常に一期一会と思って臨んでいます。「縁があれば、採用されるし、不採用なら縁がなかっただけ。」と、平常心でいるための心のスイッチのノウハウを教えてくれたのも前述のNHKの元同僚です。そんな信頼できる助言者に出会えたのは幸せで、育児休暇中の彼女の輝かしい復帰を誰より応援したいと思っています。
それから、最近、かけがえのない出会いに恵まれました。今月のはじめにナレーターとして参加させていただいたコンサート。内山由紀夫団長が率いる「もんなか・もんじゃ・オーケストラ」との出会いです。中学からの友人で二胡奏者の澤渡直子さんが所属していることもあり、そのご縁で依頼された仕事です。限られた時間でしたが、仕事と音楽をかけ持ちする社会人団員たちの情熱や、内山団長のオリジナル性に富んだアレンジが冴えわたる、誰もが主役の演奏スタイルが会場を沸かせました。2日連続、オーケストラと同じステージ上でコンサート・ナレーションを務めながら、1曲ごとに感動して、胸の奥が熱くなる高揚感を味わいました。
こんなふうにぐっと感情移入した背景には、演奏自体の素晴らしさはもちろんですが、「忙しい」を理由に憧れの楽器を憧れのまま、傍観してきたからだと気付かされました。これをきっかけに、小学生の時から憧れ続けたフルートを習い始める決心がつきました。60の手習いでもいいと思っていましたが、41歳の今から始めれば更に「よい」スタートになりそうです。この出会いに感謝して、いつかフルート奏者として上達したら、「もんなか・もんじゃ・オーケストラ」の皆さんと一緒にステージで演奏したいと、大きな夢を描いています。いえ、実現させたい夢なので10年先の目標です(笑)。
今日も明日もあさっても、ステキな一期一会で、皆さまにも更なる幸せが訪れますように。
(2012.9.23掲載)